酒場で気づかされる

俺は人を怒れない怒ることができないとかつて言われた。


変わるものだ
今は怒れる。
ただしイジメではないと思っている。


昨晩、九州出張所の部下との話合い。

その考えの甘さに口調もキツくなる。


いや彼も大人だから考えてる。考えているがもう一歩大事なものが欠けているのだ。

口調を変えて時間をかけて理解してもらうようにしてみる。
真剣に話すということは結構な疲れをもよおすものだ。
どっと疲れが襲う。

彼と別れた後に街を歩きながらホテルへ向かう道に『ああいって気分いいんかお前は?大した男でもないのに偉そうに説教なんて!』と自分を責める。

お前が彼らの年代であった時に出来ていたのか?
今もできてねぇんじゃないか?

なんだか悪酔いしてくる。


ホテルの近くの目についた小料理屋の扉を開く。


店のオヤジとカウンターに男の客一人。

『つまみはもうなかよ』

『結構です』

『あんたこっちの人ね?』
カウンターの男に声かけられる

『いや東京です』

『そんなでっかい指輪に派手な時計して何しとるひとよ?』

『サラリーマンです』


『儲かっとうと?』
なんか言い方がイラつく

『普通だよ。そういうあんたは何してるの?』

『俺なーんもしとらん。飲んどうだけの人よ』


結局ロクに名乗りもせず話しがはじまり、東京もんのしゃべりは気持ち悪いと言われいやいや博多もんも頑固者ばかりおりようと俺が言い、東京つうても郊外は博多以下よ、うんそれはそうとか

話しは尽きず。

よくよく聞けばすげー年老いて見えた店のオヤジは年下だし客の男はグンと下だしで俺が長老かよ!


『博多もんは最後ラーメンで締めるっちゃ。しかもマズウマなラーメンたい。あんた連れて行くっちゃね』



元祖長浜家


席について五秒もしないうちに作られて出てくる。

『なんでかしらんけど早いっしょ

でも一切作り置きしてないの

そんでな

本当にマズウマなんだわ』


語り合った男、ケンボーイが仕切りに俺に話しかける

『なっマズいやろでもなんかうまいやろ
これが博多たい!』


ケンボーイはラーメンもおごってくれてホテルまで送ってくれた


いい奴だった


夜に
『マズいやろでもなんかウマいやろ?』

その言葉が非常に頭にこびりついた。


俺も部下もいやすべての人もマズいとこあって、でもいいとこもあってさ。トータルうまけりゃそれが味なんじゃなかろうかとはたと思った。

一生変わらない味を出すのは難しい。味はしょっちゅう変わるけど『マズいけどウマいやろ』な人間は目指せそうな気がする。


ウマいもんばかり目指してもやがて力尽きる。マズいもん目指しても心が荒れる。マズいけどなんだか後味ウマい。そんな風に変わってみたいと思った。


ケンボーイありがとう。

店の名は『なかおっちゃんち』でした。
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