妄想大人絵本かきます「欲求」

一分間で読めるショートショートな妄想大人絵本を書いてみました。



お楽しみください。





「欲求」



参宮橋のバーのカウンターで頬杖つきながら、昔自分がモテてしょうがなかったとワタシにいいまくっている今日はじめてあった、この店の常連らしきオヤジの顔をしばらく見ている。


客はワタシとオヤジだけ。



でっぷりとベルト前に突き出したお腹。



ナイロン入りの安物のビジネスシャツ。





ミックスナッツ、柿の種といったおつまみを主食のように皿ごと片付けてはおかわりをしている。




そう、

絶対にモテたことなどないうだつの上がらない風体。


どうせ金を使ってしか女を扱ったことのない不動産屋のエロオヤジ。





ワルい癖だ。



ワタシはそんなオヤジをかわいいと思ってしまう。



自分を大きく見せて懸命にワタシを口説く姿。





自分の社会的地位、年収、豪華な暮らし、、、

数時間後のワタシの肢体を想像して、次から次に自分に見栄という看板をつけて大きく見せてくる。







早く気付けばいい。





自分の弱さに。





娘ほどの年の女にカラダ目当てで情けなくすり寄る己の弱さに。





ワタシは男に言う。





『おじさんの欲をすべて吸い尽くすけどいいかしら?』





男は湧き出る欲を吸い取ってくれとばかりに最後まで大きな態度を崩さない。







それでこそ

バブルを生き抜いた日本の男達の欲だ。





今日もオヤジからワタシは吸い尽くす。



「極上の欲望を。」



つかつかとオヤジに近づき、後5センチまで顔を近づける。



安心しきったオヤジの額にキスをする。



そしてその首に手をまとわりつかせ首筋にキスをする。



2度3度と派手な音をわざと立ててキスを繰り返す。





ヤセぎすなバーテンは気を遣って、わざとらしく何か用事を思い出したようにそそくさと外に出て行った。





オヤジの後ろに回り首の頭蓋骨の下の部分に、口に仕込んでおいた極細の穴の開いた長さ10センチのニードルを吹き込む。





シュポッと音を立ててニードルは首に突き刺さった。





唇を離してオヤジを見る。





オヤジは一瞬からだを硬直したのちに、何が起きたかわからないといった様子で振り返り私を見る。



と同時に目が白目を向いて気絶して椅子から落ちそうになった。背中でオヤジの背中を支える。



同時にきれいなピンクの液体が額のニードルから勢いよく排出される。



パンツのポケットからロック式のビニール袋を取り出して液体を入れる。量にして100CCほど、時間にして15秒。

ニードルを抜き取り、首筋をハンカチで拭く。

ビニールの匂いをかぐと生魚のにおいがした。ふたを閉じビニールをロックした。

ビニールをしまいオヤジの首をカウンターに寝かせて、寝息を確認した。

オヤジのホホをたたくとオヤジは目を覚ました。





「お客さん寝てましたね。もうお帰りになられたらどうですか?」



オヤジはワタシが誰かなどもうわからない。

どうしてこの店にいるのかもわからない。

でも自分はダレかはわかっている。



ただおいおい気付くのは記憶がところどころないことだ。

過去の記憶の中でも強い興奮や刺激を得た記憶に関してはすべて消えている。



記憶はすべて液状化してワタシがいただいた。





今日からオヤジにはいやらしい欲も無くなり、正しい老いを迎えていくのだろう。




欲望の固まり、ピンクの液体。



欲の力は強く、どんなものでも変化させてしまう力を持っている。



過去に外来魚に悩まされて生態系が崩れた沼にオヤジの欲望を固形にしてはなったところ、外来魚は駆逐され元の生態系に戻ったとのことである。

雑食の外来魚も、オヤジの欲にはひとたまりもなかったようである。

翌朝の沼には外来魚の死骸がぷかぷか浮いていたそうだ。



目には目を毒には毒を。



オヤジの欲望を変容させる研究がひそかに世界的に進められている。



ゴミ最終処理場への散布。

ドブ川への散布。

本来の毒的な部分を毒が消す効果が期待されているのはもちろんのこと低量でハイパワーなニューエネルギーの研究にも使われ始めているようだ。





オヤジの欲望。



ワタシたちの機関はこれを気化して地球のお化粧直しに使っている。



壊れたオゾン層を治すのにオヤジの欲望を役立てている。





気化されたオヤジの欲望は成層圏にてうすくなったオゾン層と科学的結合をして、新オゾン層を形成している。



われわれはその新たな気体の層を愛情をもってこういっている。



「オジン層」。



アルカリが酸を中和するように、オヤジの欲望つまりオジン層はオゾン層と結合しているのだ。



オヤジの強い欲望はオゾン層を、そして地球を救っているのだ。



紫外線の脅威は年々減っている。

オヤジたちの念がこの世の女性を紫外線から守っているようだ。

世界的にもオゾン層の減少が食い止められていることが報告されだした。



ワタシたちの活動が評価されることはうれしいことだ。

そして多くのオヤジたちの欲に感謝する。





SAVE EARTH,YESオジン層。



今日も強い欲を探して夜の街に繰り出している。





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