夢の中へ

柏のM岡の病院は、俺の10歳まで過ごした家の近くだったので、帰り道に生家がどんなことになってるか見に行った。

唖然。
なにもかも自分の印象より小さかった。要は子供の目線でものが見えていたんだな。
自分が規格外に身体が大きくなったのもあるが、駅からの通りも、そこにたっているスーパーも、家の前の路地も、すべて記憶の三〜四割ミニチュアだった。
こんな小さな世界が俺のすべての世界だったんだとバグズライフのエンディングを見ているような気持ちになった。

幼馴染みであり、名著記憶の断片の筆者であるYが風邪ひいて珍しく家にいた。
玄関から出る彼を見て納得した。
玄関ちっちゃい!
あぁおれたちが大きくなってしまったんだな。
見た?とY
アパートになってるよ。

行ってみた。生家はちっちゃい白いアパートになっていた。

そういえば当時、父親の遣いで、家を出て右に曲がって角までずっと行ったところの高橋商店で買うタバコは大きくて片手には収まらなかったなぁ。

その晩に夢を見た。生家に寝ていた。俺は子どもに戻ったようだ。
誰かがごそごそとモノを外に運び出している。
泥棒だ。
勇気を出して大きな声を出さないと。
出さないと。
泥棒だー!

その声に目覚めた。家人も起きた。

夢の中でその泥棒が何を盗んでいったのかは大人になった俺は分からない。
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